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「 ワルシャワの燕たち 」 五木寛之・著 …本物の孤独… 

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五木寛之氏の秀作、¨ワルシャワの燕たち¨(集英社)の173ページに、美しいシーンがある。 
これぞ五木寛之!
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(あらすじ)                                  
ファインセで、元テレビキャスターの鬼頭裕子が、変革期のポーランド、ワルシャワへいったきり、一年ももどってこない。 
私(沢木)は、裕子を東京へつれもどそうと、ワルシャワへ飛ぶ。
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(裕子と連絡がとれた沢木が、彼女の部屋をたずねる)

「あの写真をちゃんと持っていてくれたんだな、うれしかったよ」
私は机の上の写真のほうをふり返って言った。
「だって、フィアンセだもの」                          
裕子は私の肩にキスをして肩胛骨のくぼみに自分の鼻をおしつけた。
「だったら、東京へ帰るかい?」
裕子は黙って首をふった。
「そうか。やっぱりな」
「いつかは帰るわ。でも、それがいつなのかがわからないの。わたしはまだワルシャワに住んでいたいから」
「待てないかもしれないぜ」
「わかっているわ」
「こんな部屋にひとりで暮らしていて、さびしくはないのかい?」 
「さびしいときもあるけど、でも、そのさびしさは本物のさびしさだから」       
「本物のさびしさ、だって?」                         
「ええ、この街でのさびしさは骨の髄までしみとおるさびしさだわ。本物の孤独を知っている人たちが沢山いるから、本物の連帯が存在するのよ。そしてまた連帯した人は、いつかふたたび孤立することになる。……」

ジャンポール・サルトルは最晩期、病にふしながら「倫理」を探求した。
その内容はだれしもが推し量るしかないのだが、五木寛之氏は彼を代行しているのではないか、そんなふうに思えてしかたがない…。

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