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② 誰かと似ている。音楽事務所にて

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渋谷をブラブラ散歩の途中、偶然、ある音楽事務所の看板を発見。
少し迷ったが、意を決して、訪ねてみることにした。
有名音楽事務所とはどんな雰囲気なのか ?
興味が先だった。
アポなしで初訪問。
おまけに野郎です、相手方としては、そうはたやすく歓迎しないだろう。
けど、僕はドアをノックした。

事務所では、高齢の男性が若い社員と陽気に喋っている最中だった。
その楽しそうな雰囲気に合わせて、僕も、
「こんにちわ」
と、おおらかな声をあげた。

すると、高齢の男性が、じっと僕を見つめる。
その視線に隙がない。
ぼくはドギマギしながら、
「初めまして」
と言うべきところを…思わず、
「お久しぶりです」
と言ってしまった。

そう口走った理由は、いまだに分からない。
すると、高齢者は、
「よぉ、久しぶり」
と、応じてくれる。
そして、
< 誰だったか ? >
と、思い出そうとする表情で僕を見、ともかく、といった様子で、ぼくを応接間に招じ入れた。

季節や時節の挨拶を交わしていると、すぐに奇麗な女性がコーヒ―を運んできた。
飲みながら、音楽業界の動向に話が向かう。
飛ぶ鳥を落としたあの有名なレコード会社が、今や隅の小さな倉庫で、それも若い女性ひとりがカタログ管理をしているらしい。
どこそこの有名歌手の大番頭が、逃げるようにして田舎に引っ込んだ話など。
そうした話に及ぶと、やはり声を落とさざるをえない。
けど、人が言うように、音楽業界は決して斜陽産業などではない。
音楽や産業が駄目になるわけがないからだ。
儲からないのは、単に、その株式会社の経営問題に過ぎない。

花が咲いたのは、ずっと昔、新人歌手を探して、全国をキャラバン隊で回った話。
二十分があっという間に過ぎさる。
僕の素性など、もうどうでもいいことのようだった。
その節はありがとうございました。

後で噂に聞くと、その音楽事務所、来客からの手土産は受け取っても、御茶などは一切ださないとかで、それもコーヒーで持て成すとは奇跡に近い、と、ある作曲家が笑って言った。

僕が誰かに似ていたのだろうか ?
それとも、高齢者の高配で、迷える子羊に情けをかけてくれたのだろうか ?
ありがとうございました。

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