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花路小三郎の 「 ビリュニスの日本大使館にて、腹を立てずに戻ってきたよ 」 ④ 誰かと似ている

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ガイドブックを見ながら、ビリュニスの街中にあるらしい日本大使館へ行く。
写真では、古びた、枯れたような三階建。
その一階 ?
舗道から、石の階段を、五つほど、上がった、ところの、中央の部屋 ?
ややこしいわ。

ガイドブックの指示通り、現場に立った。
けど、日本大使館らしきが、ない。
この欠如感。
戸惑い … 期待したがゆえに、否性を感じる。

その否性ゆえに、行動を起こす。
ガイドブックを見なおす。地図の見誤りではない。
どこにも、日本大使館とおぼしき部屋はない。
ないないづくし。

ひよっとして、と思わせる部屋は、ガランドウになっている。
ガイドブックの誤記か??
閉鎖?
それとも、移転 ?
ならば、それを報せる張り紙ぐらいはあるだろう、と探すが、何もない。
これには、戸惑った、ネ。
期待したがゆえに、この否定的状況から、少しだけ恐怖を感じる、その意識を意識する。
ややこしいわ。

午後の陽光が眩しい。
舗道の並木の小陰で、商店の人たちだろうか、男たちがなにやら立ち話をしている。
彼らに訊いてみると、そろって首をかしげる。
「 分からないけど、前には確かに日本大使館はあったよ、小さな旗があがっていたね 」
長身の青年が言う。
「 前って、どれくらい前なの? 」
皆は、顔を見合わせ、
「 ふた月ぐらい前かな 」
「 移転? 」
訊くと、皆は声をそろえて、
「それは知らないよ」
と笑う。
「 何か話を聴かなかった? 教えてよ 」
「 何も聞かないね 」
「 君らは、この近くの人たちだろう 」
「 そうだよ。もう百年も前から、この店をやってるさ 」
背後の雑貨店を指して言う。
「 … 」
彼らは、他の店にも問い合わせてくれた。
けど、
「 いつの間にか、いなくなったんだよ 」
と、両手を広げた。


街の中央広場にある公式インフォメーションヘ行った。
奇麗な女性係員に訊くと、逆に、
「 日本大使館が移転したんですか? 」
と訊かれて、笑ってしまった。
「 がらんどうだよ 」
僕か答えると、女性は少し笑い、僕も笑って、
「 引っ越し先を教えてよ 」
「 分かりませんよ、情報は何もありませんから 」
奇麗な女性は、さらに奇麗な表情で言った。


大学通りを抜けて、日本レストラン、
「 扉 」
へ。
訊くと、リトアニア人の青年店員が、
「 日本大使館は引っ越ししましたよ 」
と、あっさり教えてくれた。
そして、新しい所在地を教えてくれる。
「 移転の挨拶、ありました ? 」
訊くと、青年は、
「 何もありません。彼らはこの店のお客さんじゃありませんしね 」
と、笑う。「 私の兄が建築で働いており、その兄から訊いたんですよ 」
「 ありがとう、助かったよ 」
少し早いが、晩飯を食べて、店を出た。
悪口じゃないが、米飯、水気が多く、あまりのまずさに、腹はすかしていたが、大半を残した。


教わった住所へ、ブラブラ歩く。
地図と小型の磁石で、方角を確かめながら。
街の中央からは離れた、いかにも辺鄙な地域。
高い建物はなく、汚れた二階建てと野原、工場が延々と続く。
道路や舗道の幅はゆったりしているが、まだ整備されていない。
あちこちに雑草が生え、水溜りができている。
歩きながら、妙に気が滅入り、戻ろうかな、と何度か思った。
けど、暴漢に襲われる、そんな気配は欠片もないので、安心して歩ける。


「 もう、歩けないね 」
疲れたよ、その時、突如として現れたのは、
「 驚いた ! 」
前方斜め側に、舗道に沿う様に金網が伸びており、青々とした広い芝生の庭が現れたのだ。
その奥に、金ぴかの現代風の建物が、夕陽を浴びて光り輝いている。
凄い !
いかにも沢山の金を使いました、と言いたげに、屋根が斜めに洒落た格好をつけている。
庭の中央では、日章旗が風に揺らいでいる。
まァ、愕然とした、ネ。
周囲から、浮きすぎている。

金網にもたれていると、建物の裏から、ひとりの男性が庭に出てきた。
初老のリトアニア人だ。
「 今日は 」
と、僕は笑って手をあげた。
男は何か言って、拍手するように手を動かして、僕を庭に招じ入れる。
どうして ?
彼は、腕時計で時刻を確かめると、頷いて、英語で、
「 では、お願いします 」
と言った。
僕も英語で、
「 何をするの ? 」
「 もう五時ですから、旗を降ろします 」
なんだって ?
これは、誰かと間違えているのだ。
僕は内心笑って、
「 日の丸を降ろせばいいんだね? 」
「 そうです 」
僕は日章旗のロ―プ紐を引っ張った。
ポールの天辺の歯車の調子が悪い。
ロープと歯車の噛み合わせが悪く、ひっ掛る。
けど、どうにか果たせた。


彼の後に従って、裏口から建物の中へ。
下級らしい日本人館員が、ひとり居て、ボサッとしている。
僕に気付いて、驚いたように、けど、口では、
「 ご苦労さま 」
そう言って、「 ポールを変えるのは、また次の機会でいいですよ。その様に会社に電話をしましたから 」
建築屋と間違えているのだ。
気付いて、僕は男に合わせた。
「 歯車も調子が悪く、旗も汚れてますね、新しいのに変えた方がいいですよ 」
男は返事をしないで、ムっとした表情をつくり、
「 だから、電話したとおりですよ 」
「 そうですよね 」
僕はおおらかに言って、笑った。

その後、何を思ったか、彼はカン紅茶を出してくれた。
飲んでから、僕は機嫌良く笑って、? その金ぴか御殿 (ごてん) を後にした。

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